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M65・M66・NGC3628【3月1日撮影】

M65・M66・NGC3628【3月1日撮影】
やったー! 長年の夢だった系外銀河の撮影についに成功しました。これが記念すべき銀河1作目となります。デジタル一眼レフカメラを望遠鏡に取り付け、自動導入で対象の銀河を捉え、赤道儀で星を追いかけ、約4分間、日周運動を止めてじっくり露出。すると、肉眼では見えなかった系外銀河3兄弟がはっきりと浮かび上がってきました。今まで本などでしか見た事がなかった「しし座の銀河トリオ」。今、実際に私の手で映し出されたこの銀河たちの様子を見て、「銀河が撮れるって本当だったんだ…」と初撮影の喜びに浸りました。ちなみに撮影場所は特別な所ではなく、市街地の自宅ベランダなのです。


【約3000万光年】しし座の銀河トリオ

上から NGC3628、M65、M66
イメージ 1
撮影日時 : 2008年3月1日 23時22分~41分
撮影地 : 熊本県熊本市 / カメラ : ニコン D70
望遠鏡 : ビクセンR200SS (口径200mm) / 赤道儀 : ビクセンSXD
撮影方法 : 直焦点撮影(F4)
露出時間 : 39秒×1、75秒×2、202秒×1 (総露光時間 : 6分53秒)
※ステライメージ5にて画像処理、トリミング

さて、R200SS鏡筒を購入して早13年。この望遠鏡で遥か彼方の銀河を撮るのを夢見ていいたので撮影結果を見て感動しました。

この記念すべきファーストライト銀河写真は、各々が個性的な姿を見せる「銀河トリオ」。太陽(地球)からの距離はM66が2,700万光年、残り2つの銀河はともに2,900万光年(書籍「メシエ天体アルバム」より)と、我々の想像も付かない遠さです。それでも「億光年」という単位も登場する天文学の分野からすれば、3千万なんて「途方もなく」という遠さでもないこともお判りですね。

一番上の潰れたような形の銀河NGC3628には、中央に黒い帯が写っています。これは、銀河の光らない塵の帯が銀河の光芒を隠している様子。そして右側のM66は、渦を巻いている渦巻銀河という種類です。

この画像には星もたくさん写っています。3つの銀河を「外国」に例えると、周囲に写っているそれ以外の星は全て「国内」にあたります。つまり、点々は全て我々の銀河系の中にある星なので、距離はせいぜい20万光年以内、3つの銀河より100分の1以下の距離という近さなのですね。そのように遠近感を感じながら見ると、宇宙の奥行きを感じられるかと思います。


導入テク

赤道儀の極軸は大雑把に北へ向けただけのノータッチガイド撮影なので、アライメントで予め追尾精度を上げておく必要がありました。今回、導入前に行った撮影前の準備の1つ、スターブックでのアライメントには4つの星を使いました。

まず、対象天体の近くにある土星をスターブック「チャートモード」で選択&「スコープモード」に切り替えアライメント作業。2点目として東の空低く昇ったばかりのアークトゥルス、3点目にはそのまま春の大曲線に沿ったスピカを使うべく仮自動導入。スピカはまだ思いっきり低倍率の視野外。さらにしし座のしっぽの星(デネボラだったか…)で4点目のアライメントをしようと導入したら、この星もまだ視野中央に来ておらず、自動導入の精度は不十分。精度向上のためにアライメントポイントをもっと増やしてやる余地があるな、と痛感しました。後でSXDの取扱説明書を見ると、アラインポイントはなんと19点まで増やすことができるそう。今度使うときは10点近くやって精度を極めようと思いました。そうして改めて土星を見ようと思ったとき、ふいにスターブックの画面からM65とM66の銀河マークが目に止まる。よし、導入してみよう!と、星図モードで選択し、鏡筒がグイーンと動いて自動導入しました。


導入風景
イメージ 2

ディスプレイの中央にM66とM65が表示され、導入完了したところです。望遠鏡の視野内には銀河が見えているはず、と眼視で低倍率アイピースを覗いてみましたが、空が明るい為か銀河らしきものは見あたりませんでした。目で見えないものでも、写真で数分間露光すれば写ります、それが天体写真です。と、眼視で何も見えなかったこのエリアを直焦点撮影しました。

撮影直後の生画像
イメージ 3
(1枚目の未処理バージョン。90度回転)

今回の撮影はF4直焦点のノータッチで、最長4分の露光でした。4分露光では星はわずかに線を引いていたので、10分も露出すると、もうノータッチガイドでは厳しいものがあるかなあ、と初心者なのに早くも(星をピタッと止める)オートガイダーシステムの購入を考え始めました。

銀河トリオや土星のいるしし座は、まさに空高く南中しようとしていましたが、ぎりぎり子午線に到達する前に撮影できて安心しました(子午線を超えちゃうと鏡筒も反転するわ、精度も落ちるわで厄介ですから)。



画像処理テク

撮れたての写真はこのように著しくコントラストが低いです。この「素材」を強力にコントラスト強調するなどして、背景を黒く、天体を明るく際立たせます。そのため、デジタル一眼レフカメラ側の設定で「FINE」設定、またはRAWモードに設定しておかなければ、JPGの階調圧縮の影響をモロに喰らって画質が落ちます。特に銀河の腕部分などは淡く、デリケートですので。私の場合、64MBのCFカードを使っているのでピント合わせ撮影用の容量確保のためにも、RAWは避けてFINEのJPGで撮ってしまっています。FINE設定でどれだけ圧縮の犠牲になるのか判りませんが、RAWの重さが嫌いなので、今後もJPGのFINEで撮り続けるつもりです。

今回は4枚コンポジットしましたが、露出時間は気まぐれでバラバラです。ステライメージ5にて「加算」コンポジット処理をするのが前提ですので、もともと露出時間は関係ないとみたのです。


ハード処理版
イメージ 4
(1枚目の強力処理バージョン)

こちらは、とにかくコントラストを上げてみたバージョンです。工夫点として、トーンカーブ補正でヒストグラムの山の右側斜面部分のみのレベルを上げたことです。銀河の腕などの淡い部分はこの領域に情報が含まれているようなので、このような設定することで、銀河の中央を白飛びさせずに銀河の淡い外側付近のみを明るくできます。ただ、大げさに上げすぎると不自然な画像になり、「なにか手を加えたな!」と処理がバレバレになってしまいますので注意。

あとは、バックグラウンドスムースで背景のノイズを誤魔化し、スターシャープで周囲の星々を控えめにさせて、JPG記録なのでホワイトバランスが赤っぽかったのもRレベルで補正。左上部に出現する赤カブリはPhotoShopで特定色の明るさ補正で暗くすることで赤みを抹消。ダーク補正?そんなの面倒臭い

周辺減光補正も欠かせないですが、これまで気付かなかった等光曲線チェックボックスをオンにすることで、明るさのピークを探し出せました。そこにカーソルを乗せれば、画面全体をさりげなく平坦な明るさにすることができました。
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開始日: 2005/2/9(水)